就職情報サイトのマイナビの調査で、2027年卒学生の就職活動におけるAI利用が8割超に達したことが分かりました。中高生の進路指導でも、AIを禁止か容認かで捉えるのではなく、判断力と自己理解を育てる使い方を考える材料になります。
就活のAI利用は特別なことではなくなった
株式会社マイナビ(東京都千代田区)の2027年卒大学生向け調査では、就職活動でAIを「利用したことがある」学生は84.9%にのぼり、前年から18.3ポイント増えました。大学生にとってAIは一部の先進的な学生だけの道具ではなく、就活の標準的な支援ツールになりつつあります。
利用場面で最も多かったのは「ESの推敲」71.8%で、続いて「面接対策」56.2%、「ESの作成」55.0%でした。特に面接対策の伸びが大きく、AIが文章補助だけでなく、対話練習や想定問答の相手として使われている実態が見えてきます。
効率化だけでなく不安を支える役割も
AIを使う目的の最多は「作業時間の短縮」54.3%でした。一方で、「自分だけの考えで決めるのは不安だから」と答えた学生も28.8%に達しています。これは、AI利用の背景が単なる時短ではなく、進路選択や自己表現に伴う心理的負担の軽減にも広がっていることを示しています。
実際に、就活についてAIに「相談したことがある」学生は47.6%でした。相談内容には、将来への漠然とした不安、面接がうまくいかなかったときの気持ちの整理、友人や周囲に話しにくい焦りなどが含まれていました。AIが情報検索の道具から、思考整理や感情の受け止め役にもなり始めている点は、学校現場にとっても見逃せません。
ただし学生はAIを答えにはしていない
注目したいのは、学生がAIを無批判に信じているわけではないことです。AIからの回答については、「判断材料の一つとして考慮する」が68.7%で最多でした。最終判断をAIに委ねるのではなく、複数の情報源の一つとして扱う姿勢が主流です。
この傾向は、中高生への情報活用教育にもつながります。AIは便利ですが、誤情報や一般論に寄りがちで、本人の価値観や置かれた状況まで完全には理解できません。だからこそ、AIの回答をそのまま採用するのでなく、「なぜこの提案になるのか」「自分には本当に合うのか」と問い返す力が重要になります。
AIの普及は進路観そのものに影響し始めている
AIの普及によって就職活動が「変化した」と答えた学生は62.6%でした。具体的には、「人に相談する代わりにAIを使って検討することが増えた」が25.4%で最多でした。
さらに注目すべきは、将来の職業選択への影響です。「AIに代替されにくいと感じる業界・職種を中心に応募するようになった」学生が11.4%、「もともと志望していた業界・職種の選考を受けるのをやめた・控えた」学生も3.4%いました。AIは就活のやり方を変えるだけでなく、若者の職業観や将来不安にも影響を及ぼし始めています。
中高生の段階でも、「AIに置き換えられない仕事は何か」という問いに関心を持つ生徒は増えていくはずです。ただし、単純に“なくならない仕事”を探すのではなく、変化する社会でどんな力が求められるかを考える進路学習が必要です。
学校が今から育てたいのは「AI時代の自己決定力」
今回の調査から見えるのは、AIが進路選択の伴走者になりつつある一方、最後に必要なのは本人の納得感だということです。自己分析、志望理由、面接での受け答えは、AIが下書きや壁打ちを支援できても、本人の経験や価値観が伴わなければ説得力を持ちません。
そのため中学・高校では、AI活用のスキルと同時に、自己理解、情報の比較検討、他者との対話、根拠をもって選ぶ力を育てることが重要です。AIを使えること自体よりも、AIを使って何を深めたかが、次世代の学びと進路形成の質を左右します。
💡 先生へのポイント
- 進路指導で「AIを使ってはいけない」ではなく、「どう使えば考えが深まるか」を話題にする
- 志望理由書や面接練習では、AIの提案と本人の言葉の違いを比較させる
- 生徒がAIに相談しやすい時代だからこそ、学校や家庭でも安心して不安を話せる場をつくる
- 将来の仕事を考える授業では、「消える仕事」ではなく「人に求められる力」に焦点を当てる
まとめ
大学生の就活では、AIはすでに文章作成支援を超え、相談相手や判断補助として広く使われています。中高生の進路指導でも、AIを前提にしながら、自分で考え、選び、言葉にする力をどう育てるかがますます重要になりそうです。
出典:「マイナビ 2027年卒 大学生キャリア意向調査4月<就活生のAI利用について>」を発表 | 株式会社マイナビのプレスリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002419.000002955.html




