今年7月に公表の教員2,000人調査から、生成AIへの期待と懸念、教職のやりがい、教材として活用したいマンガなどが見えてきました。学校現場でのAIルールづくりや授業設計のヒントを、実務目線で整理してみましょう。
教員のやりがいは、子どもの変化にある
ジブラルタ生命保険株式会社(東京都千代田区)が2026年5月に調査し、同年7月に公表した「教員の意識に関する調査2026」では、20歳~69歳の小・中・高・特別支援学校の教員2,000人(男性1,000名・女性1,000名)のネット回答から、教職のやりがい、生成AIの使われ方、教材観、理想の学校像が浮かび上がりました。話題性のある「理想の校長先生」ランキングだけでなく、現場改善に直結する示唆が多い調査です。
教員としてやりがいを感じる場面の上位は、「児童・生徒の成長が感じられたとき」「児童・生徒の笑顔を見たとき」「児童・生徒と感動を分かち合えたとき」でした。待遇や制度以前に、日々の実感として最も大きいのは子どもとの関わりであることが改めて示されています。
一方で、「児童・生徒に自分を反面教師にしてほしいと思ったことがある」教員は38.9%。内容には「学生時代に勉強をおろそかにしたこと」「自分のものさしで他者をはかってしまうこと」「家庭と健康を犠牲にして働くこと」などが挙がりました。教員自身が失敗や偏りを言語化し、学びとして還元しようとしている姿勢も見て取れます。
生成AIは“活用したい”が先行、ただし警戒も
調査で特に注目したいのは生成AIです。「児童・生徒が望ましい使い方で生成AIを使っていると感じることがある」は51.4%、「望ましくない使い方で使っていると感じることがある」は57.7%でした。適切活用の実感が半数を超える一方、不適切利用のほうがやや多く、学校現場が期待と不安の両方を抱えている状況がうかがえます。
また、「自分より児童・生徒のほうが生成AIを使いこなしていると感じる」は74.3%、「自分の作業効率化のために生成AIを活用したいと思う」は81.6%に達しました。教員の多くが、学習者の変化に追いつく必要性を感じつつ、自身の校務改善にもAIを役立てたいと考えていることがわかります。
望ましい利用例としては、グラフ作成、練習問題づくり、英語表現の確認、面接練習、進路調査などが挙がりました。反対に、読書感想文や作文の代筆、問いの丸投げ、図書資料を使わない依存、他者を傷つける画像生成、著作権への無自覚、AIだけへの悩み相談などが問題視されています。単に「使う・使わない」ではなく、目的・過程・出力の扱い方まで含めた指導が必要だといえそうです。
教材のマンガ・動画は“入口”として期待
授業で最も活用したいマンガは、1位「ドラえもん」、2位「SLAM DUNK」、3位「ONE PIECE」でした。「ドラえもん」は会話や秘密道具を通じて発想力や対話の教材にしやすく、「SLAM DUNK」は困難克服や成長、「ONE PIECE」は歴史・地理的要素の広がりが評価されています。
児童・生徒に薦めたいYouTubeチャンネルでは、「QuizKnock」「小島よしおのおっぱっぴー小学校」「中田敦彦のYouTube大学」が同数1位でした。共通するのは、わかりやすさ、学びへの接続、乱暴さの少なさです。エンタメをそのまま授業化するのではなく、興味関心を引き出す導入材として見る教員が多いことが伝わります。
教科観から見える、学び直し設計のヒント
子どもの頃に好きだった教科は男女ともに「算数・数学」が1位でした。さらに、大人になって役立つと実感した教科でも「算数・数学」が男女1位となっています。論理的思考、シミュレーション、予測、資料作成への応用など、教科横断的な価値が再認識されている形です。
興味深いのは、文系教科担当者が子どもの頃に「算数・数学」を苦手とし、理系教科担当者が「国語」を苦手としていた傾向です。これは、教員であっても学習のつまずき経験を持つことを示しています。だからこそ、教科指導では「わかる人の説明」だけでなく、「つまずいた人がどう乗り越えたか」を共有する設計が有効です。
理想の校長像…学校マネジメントへの期待
理想の校長先生のイメージに合う有名人は、男性回答1位が武田鉄矢さん、女性回答1位が天海祐希さんでした。理由には、子どもにも教職員にも向き合ってくれそう、公平そう、必要なときにきちんと意見を言ってくれそう、といった声が並びました。
この結果は人気投票にとどまりません。現場が求めているのは、強い発信力だけでなく、公平性、安心感、対話力、職員への配慮を備えたリーダー像だと読めます。学校改革を進めるうえでも、教員支援と生徒理解を両立するマネジメントが重要だといえるでしょう。
💡 先生へのポイント
- 生成AIは「禁止」か「全面解禁」ではなく、使ってよい目的とNG例を具体化する
- 作文や感想文は、提出物だけでなく下書き・対話・推敲過程も評価に入れる
- マンガやYouTubeは導入教材として活用し、教科学習へ橋渡しする
- 自分の失敗談や苦手克服の経験は、進路指導や学習支援の強い材料になる
- 校内研修では、教員の校務効率化と児童生徒指導の両面でAI活用を扱う
まとめ
今回の調査は、教員が子どもの成長にやりがいを感じながらも、生成AI時代の指導や学校運営の変化に向き合っている実態を示しました。AI活用ルール、導入教材の選び方、学び直しを支える指導設計を見直すことで、現場の納得感ある改善につなげやすくなりそうです。
出典:ジブラルタ生命調べ 理想の校長先生のイメージに合うと思う有名人 男性回答1位「武田鉄矢さん」、女性回答1位「天海祐希さん」 | ジブラルタ生命保険株式会社のプレスリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000018.000034948.html




