大阪府の北河内地域に位置する交野(かたの)市教育委員会が今年7月、教職員向けの生成AI利活用ガイドラインを公開しました。禁止や義務化ではなく、人間中心の原理を前提に、校務利用と児童生徒の学習利用で押さえるべき観点を整理しており、学校現場の実装判断に役立つ内容です。
人間が最終判断するという前提で
大阪府の交野市教育委員会は2026年7月、同年4月策定の「生成AI利活用ガイドライン」を公表しました。文部科学省の「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」を踏まえたもので、交野市立学校の教職員が生成AIを適切に活用する際の参考資料という位置づけです。利活用を一律に禁止したり、逆に導入を義務付けたりするものではない点が明確に示されています。
ガイドラインの中心にあるのは「人間中心の原理」です。生成AIの出力はあくまで参考情報の一つであり、内容の妥当性確認、最終的な判断、成果物への責任は人間が負うべきだと整理されています。これは校務でも授業でも共通で、AIに判断を委ねるのではなく、教職員の専門性を土台に使う姿勢が求められます。
あわせて、児童生徒の学びにおいては、生成AIの使用自体を目的化しないことも重要視されています。資質・能力の育成や教育目標の達成に資するかを見極めたうえで活用するべきであり、教師による指導計画、学習状況の見取り、個別支援といった役割は引き続き不可欠です。
校務利用で重視される安全性と情報管理
教職員による校務利用では、安全性を考慮した適正利用が強調されています。教育委員会や学校の方針に従うこと、私用端末の利用を避けること、利用可能な環境を明確にすることなど、運用面の統制が前提です。
特に重要なのが情報セキュリティです。成績情報、指導要録に関わる情報、未公表の校務情報など、機密性の高い情報を生成AIに入力しないことが求められます。個人情報やプライバシーの保護に加え、著作権への配慮も必要で、教材や配布物の作成時には引用や利用範囲を確認する姿勢が欠かせません。
さらに、生成AIには事実誤認や偏りが生じうるため、公平性の確保も論点として挙げられています。AIがもっともらしい誤情報を返すハルシネーションや、学習データ由来のバイアスを理解したうえで、複数資料との照合や教員による見直しを前提に使う必要があります。
学習利用では「育てたい力」との接続が鍵
児童生徒の学習利用についても、単なる利便性ではなく教育的効果から判断する構成です。たとえば、発想の広がりを得るためのアイデア出し、英会話の練習相手、文章の改善観点の提示などは、学習活動を支える使い方として例示されています。一方で、コンクール応募作品や課題を生成AIでほぼそのまま作成し提出することは不適切とされ、学習者本人の思考や表現の機会を奪う利用は避けるべきだと示されています。
この整理は、評価との関係を考えるうえでも重要です。学習評価は児童生徒の到達状況や思考過程を把握するためのものであり、AI生成物の提出が中心になると、何を評価しているのかが曖昧になります。ガイドラインが、教師の代わりに評価判断をAIへ任せることを不適切例としているのは、評価の責任主体を明確にするためでもあります。
保護者説明と情報活用能力の育成も視野に
今回のガイドラインでは、透明性の確保と説明責任にも触れています。学校でどのような目的で生成AIを使うのか、どのような情報は入力しないのか、児童生徒にどのようなルールを求めるのかを、必要に応じて保護者や関係者へ丁寧に説明することが求められます。
同時に、生成AI時代を踏まえた情報活用能力の育成も大きなテーマです。情報モラル、真偽の見極め、著作権理解、AIの限界認識といった力は、今後ますます基礎的な学習内容になります。単に「使わせるか、使わせないか」ではなく、「どう使えば学びにつながるか」を学校として設計する視点が必要だといえます。
💡 先生へのポイント
- まずは「何を楽にするか」より「何を育てるか」で利用場面を選ぶ
- 校務で使う前に、個人情報・成績情報・未公表情報を入れない運用を明文化する
- AI出力は必ず教員が事実確認し、そのまま配布しない
- 課題や評価では、AI利用の可否・範囲・申告方法を事前に示す
- 保護者説明では、利便性だけでなくリスク対策もセットで伝える
まとめ
今回の交野市のガイドラインは、生成AIを推進一辺倒でも禁止一辺倒でもなく、学校現場での判断軸を具体化した点に価値があります。校務効率化と学習支援の可能性を認めつつ、人間中心、情報保護、教育目的との整合を重視する構成は、他自治体や学校の運用設計にも参考になりそうです。
出典:交野市教育委員会 生成AI利活用ガイドラインについて | 交野市 https://www.city.katano.osaka.jp/docs/2026072700042/




