この度、国士舘大が在学生向けに生成AI利用の基本方針を公表しました。個人情報、著作権、授業ルールの3点を軸に、大学がAIをどう教育に組み込もうとしているかを把握できる事例です。
AIとの付き合い方をどう大学が定めるか
国士舘大学(東京都世田谷区)が在学生向けに生成AIの利用に関する注意事項を2026年6月22日に公表しました。内容は、単なる使用禁止ではなく、AIが今後社会で不可欠な技術になることを前提に、学生一人ひとりが「安心して使い、適切に活用する資質・能力」を身につけることを目指したものです。日本の大学がAIとの付き合い方をどう定め始めているかを示す、実務的な事例として注目できます。
指針の中心は「使うな」ではなく「理解して使う」
今回のメッセージでは、生成AIの急速な普及と高度化を踏まえつつ、その特徴や限界を理解した上で利活用する必要性が強調されています。大学として学生に求めているのは、AIを避ける姿勢ではなく、主体的かつ創造的な学びに生かす姿勢です。
この点は、大学教育が「AI禁止」から「AI活用教育」へ移行しつつある流れを象徴しています。特に、情報収集や内容整理の補助としての利用は一定程度認めつつ、最終的な判断や検証は学習者自身が担うべきだという考え方が明確です。
学生向け注意事項は3つの論点に整理
国士舘大学の指針は、大きく3つの観点で構成されています。
1つ目は、個人情報や機密性の高い情報を入力しないことです。生成AIサービスでは、入力内容や生成結果がサービス改善に再利用される場合があるため、公開されても問題のない情報だけを扱うよう求めています。設定によって学習利用を拒否できる場合もあるため、利用規約や初期設定の確認も重要だとしています。
2つ目は、著作権など他者の権利侵害への注意です。生成された文章・画像・音声を複製や公開に使う際には、既存著作物との類似性や依拠性が問題になり得るため、安易な利用を避ける必要があります。教育現場で生成物を配布資料や提出物に転用する際にも、そのまま使うリスクを意識させる内容です。
3つ目は、授業ごとのルールに従うことです。担当教員が認める範囲での活用は可能である一方、禁止されているレポート、論文、小テスト等で使えば不正行為とみなされる可能性があります。また、使用が許可されている場合でも、どのようにAIを使ったかを明記することが重要だと示されています。
教員側にも求められる「利用条件の明文化」
この指針は学生向けでありながら、実質的には教員側への示唆も大きい内容です。なぜなら、授業での可否を担当教員の指示に委ねる以上、各科目で「どこまで認めるのか」「申告は必要か」「評価対象は何か」を具体化する必要があるからです。
たとえば、アイデア出しや構成案の作成は可、本文の自動生成は不可、引用や要約には出典確認を必須とする、といった運用ルールが考えられます。AI利用の有無そのものではなく、学習目標に照らして何を学生自身の思考・表現として求めるのかを設計し直す段階に入っていると言えます。
大学のAI方針は「情報モラル教育」の更新でもある
同大の事例は、生成AI対応を特別な新ルールとして切り出すだけでなく、情報モラル、アカデミック・インテグリティ、著作権教育を現代化する動きとして読むこともできます。個人情報保護、権利侵害防止、真偽確認、利用開示という論点は、学校種を問わず今後のAI活用指導の基本線になりそうです。
同大は参考資料として、総務省の生成AI入門資料と、文部科学省による大学・高専向けの生成AIの教学面での取扱い通知も案内しています。現場判断に任せきりにせず、公的資料に基づいて最低限の共通理解を整えようとする姿勢もうかがえます。
💡 先生へのポイント
- 「AI使用可/不可」だけでなく、使用可能な工程を課題ごとに分けて示す
- 提出物には「使用ツール」「使用箇所」「確認方法」を書かせると運用しやすい
- 小テスト、レポート、論文で不正の定義を明文化しておく
- 情報の真偽確認や著作権確認を、AI活用課題の評価項目に入れる
まとめ
今回の国士舘大学の指針は、生成AIを一律に禁じるのではなく、リスクを理解した上で学びに生かす方向へ大学が舵を切り始めていることを示しました。教員や学校担当者にとっては、AI活用の可否を問う段階から、授業設計と評価基準をどう更新するかを考える材料になる事例です。
出典:【在学生の皆さんへ】生成AIの利用にあたって|国士舘大学 https://www.kokushikan.ac.jp/current/news/005715.html




