東京青年会議所がこの度、教育現場における生成AI活用の意向調査と今年2月例会の実施報告を公開しました。導入の障壁と普及の打ち手が整理されており、学校管理職やICT担当、教員研修の担当にとって実践のヒントになる内容です。
関心は高いが、導入は「環境整備」が前提
東京青年会議所 教育政策室は、2026年2月に開催した例会「AIと創る未来の教育」の実施報告と、参加者アンケートに基づく先行的な現場意向データを公表しました。調査では、教育現場に生成AIへの高い関心と実践意欲がある一方、普及にはルール整備や研修、安全な利用環境が不可欠であることが示されています。
アンケートでは、参加者の中にすでに授業で生成AIを活用している層が一定数含まれ、全体として関心の高い教育関係者が集まっていたことがうかがえます。さらに、「適切な環境が整えば、すぐに、または3カ月以内に本格活用したい」とする回答が多く、現場には導入を前向きに進めたい意向があることも確認されました。
一方で、実際の導入を妨げる要因としては、「活用方法が分からない」「校内合意形成が難しい」「前例がなく不安」「教育委員会の方針が不明確」「運用ルールやセキュリティ面への懸念」といった声が挙がっています。つまり、ツールそのものよりも、運用の土台づくりがボトルネックになっている構図です。
現場が行政・教育委員会に求める5つの支援
自由記述では、行政や教育委員会に対する要望が比較的はっきり整理されています。主な論点は5つです。
第一に、自治体内で統一されたガイドラインや責任範囲の明確化です。現場としては、トラブル時に誰がどこまで責任を負うのかが見えないと動きにくい状況があります。
第二に、個人情報、著作権、誤情報、生徒の不適切利用への不安です。生成AI活用は利便性だけでなく、リスク管理の設計とセットで考える必要があります。
第三に、閉域環境や公式アカウントなど、安全に使える利用環境の整備です。教員だけでなく児童生徒も含めて、安心して使える基盤が求められています。
第四に、教職員研修と校内浸透への支援です。関心の高い層だけでなく、慎重な層や経験年数の長い教員も含めて学べる仕組みが必要だといえます。
第五に、研究校だけに偏らない横展開です。多忙な学校現場では、先進事例を紹介するだけでなく、一般校でも無理なく導入できる支援設計が重要になります。
普及の鍵として浮上した「校内キーパーソン」
今回の発表で特に注目したいのは、生成AI活用の普及において「校内キーパーソン」へのアプローチが有効だと示された点です。調査では、参加者の約67%が「4人以上の同僚に影響を与えられる」と回答しました。
これは、校長・副校長、ICT担当、教務主任、学年主任といった校内で影響力を持つ立場の人が先に学び、実際に使い、注意点も含めて共有することで、学校内に波及しやすいことを示唆しています。全教職員へ一斉導入を呼びかけるより、まずは小さな推進核をつくる方が現実的で、定着にもつながりやすいという見方です。
教員の間には、生成AIに前向きな層と慎重な層が混在しています。そのため、校内で信頼される人物が具体的なユースケースを示せるかどうかが、心理的ハードルを下げる大きな要素になりそうです。
例会の位置づけと調査の見方
例会はTokyo Innovation Baseで開催され、教員、教育委員会関係者、管理職、ICT担当者などが参加しました。講演では、生成AIとの付き合い方、教員向け活用術、学校マネジメント、教育DXとリーダーシップなどが扱われています。
なお、アンケート回答は58件で、生成AIに関心の高い参加者を中心とした先行的データです。発表でも、すべての教育現場を代表する統計調査ではないと明記されています。したがって、全国的な一般化には慎重さが必要ですが、少なくとも「前向きな現場が何に困っているか」を把握する材料としては有用です。
💡 先生へのポイント
- まずは全校導入より、管理職やICT担当を含む少人数の推進チームづくりから始める
- 校務効率化、授業準備、文章たたき台作成など、効果が見えやすい用途で小さく試す
- 利用ルール、個人情報、著作権、出力確認の手順を先に整理して不安を減らす
- 研修は「操作説明」だけでなく、実際の授業・校務場面に即した事例共有型にする
まとめ
今回の調査は、教育現場に生成AIを使いたい意欲がすでに存在する一方で、普及には制度・研修・安全環境の整備が欠かせないことを示しました。特に、校内で影響力を持つキーパーソンを起点に広げる設計は、学校現場での実装を進めるうえで現実的なアプローチとして注目されます。
出典:教育現場の生成AI活用、普及の鍵は「現場キーパーソン」 | 公益社団法人東京青年会議所のプレスリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000345.000073012.html




