この度の博報堂の国際比較調査から、東京圏ではテレビへの信頼が根強い一方、生成AIは慎重に受け止められつつも利用意向が高いことが分かりました。学校現場では、AIを“新しさ”で押し出すより、負担軽減と安心設計を軸に導入する視点が重要です。
東京圏は「信頼できる情報源」を重視する
株式会社博報堂(東京都港区)のメディア環境研究所による「グローバル・メディア・テック調査2026」で、東京圏・ロサンゼルス・上海・ロンドン・ドイツの5地域を比較し、メディア接触とAI・先進テクノロジー受容の違いを示しました。教育関係者にとって注目したいのは、東京圏がAIに最も慎重な地域でありながら、生成AIの利用意向は80.7%と高く、受け入れの余地が大きい点です。
東京圏では、「毎日利用するメディア」「信用度の高いメディア」ともにテレビのリアルタイム視聴が1位でした。10代・20代では日常利用の中心がSNSに移りつつある一方、信用度では依然としてテレビが上位です。
この傾向は、学校教育における情報活用にも示唆があります。児童生徒はSNSや動画で情報に触れていても、信頼できる情報かどうかを見極める基準はまだ十分にデジタル側へ移っていません。生成AIの活用を進める際も、「便利だから使う」だけでなく、「なぜその出力を信頼してよいのか」「どう検証するのか」をセットで教える必要があります。
AIは浸透中だが、東京圏は導入に慎重
東京圏では、レジなし店舗やメタバース交流など先進テクノロジーについて、約7割が「あてはまるものはない」と回答し、5地域で最も慎重でした。一方で、生成AIの利用経験率は61.9%、現在利用率は56.2%まで伸びており、この1年で着実に普及しています。
教育現場でも同じ構図が見られます。校務支援や授業準備でAIへの関心は高まっているものの、実際には「誤情報が不安」「個人情報の扱いが心配」「生徒にどこまで使わせてよいか分からない」といった慎重論が導入を鈍らせています。つまり、学校はAIを拒否しているのではなく、安心して使える条件が整っていない状態だと捉えるほうが実態に近いでしょう。
学校の普及を左右する「負担軽減」の実感
今回の調査では、東京圏で「AIに防犯を任せたい」「ロボットに介護を任せたい」「ロボットに運転を任せたい」という意向が比較的高く、不安や負担の軽減につながる領域で受容が進みやすいことが示されました。
これは学校でのAI導入にもそのまま当てはまります。たとえば、授業案のたたき台作成、テスト問題のバリエーション生成、保護者向け文書の下書き、個別最適な練習問題の作成など、教員の時間的負担を減らす場面では受け入れられやすいはずです。逆に、評価の最終判断や生徒指導のように、人間関係や文脈理解が不可欠な領域では、AIを前面に出すと抵抗感が強まりやすいと考えられます。
重要なのは、AIを「教師の代替」として語らないことです。学校現場では、AIは教員の専門性を補強し、確認作業や反復作業を支える道具として位置づけるほうが導入しやすいでしょう。
AIリテラシーは「使う技術」→「疑う技術」へ
利用意向80.7%に対して現在利用率56.2%という差は、今後さらに学校内外で生成AIが広がる可能性を示しています。生徒が家庭や個人端末で先にAIを使い始めることも十分想定され、学校が無関心ではいられません。
その際に必要なのは、プロンプトの上手さだけを競う教育ではなく、出力の偏り、根拠確認、著作権、個人情報、学習の代行と支援の境界を考える教育です。特に東京圏のように「信頼性」を重視する文化では、AI活用教育はメディアリテラシー教育と一体で設計することが効果的です。AIを使わせるか禁止するかの二択ではなく、「どう確かめ、どう責任を持って使うか」を学ばせる段階に入っています。
💡 先生へのポイント
- 生成AI導入は「新技術の体験」より「校務負担の削減」から始める
- 生徒利用のルールは、禁止中心ではなく確認方法と引用・根拠提示まで含めて設計する
- AIの出力をそのまま信じない活動を授業に入れ、情報の検証習慣を育てる
- 保護者説明では、利便性よりも安全性と教育目的を明確に伝える
まとめ
今回の調査でわかったのは…東京圏の生活者はAIに慎重でありながら、役立つ場面が明確なら受け入れる姿勢を持っています。学校教育でも、AIを流行として導入するのではなく、不安を減らし、教員と生徒の負担を軽くする具体的な活用から積み上げることが、定着への近道になりそうです。
出典:グローバル・メディア・テック調査 | メディア環境研究所|博報堂 https://mekanken.com/data/8830/




