花まる教育研究所の調査で、AI時代に「いい大学に入れば安定」という見方が弱まると考える保護者が75.6%に上りました。学校・塾にとっては、受験指導の先にある「思考力」「問いを立てる力」をどう設計するかが問われています。
AIが変えたのは進路観だけでなく教育の前提
学習塾「花まる学習会」の花まるグループ(埼玉県さいたま市)が運営し、教育・子育ての取り巻く社会課題を調査・研究する花まる教育研究所が今回、小学生以下の子どもを持つ保護者164人を対象に実施した調査では、AIが教育観や進路観に大きな影響を与えている実態が示されました。象徴的なのは、75.6%が「AIによって『いい大学に入れば安定した将来につながる』という考え方は弱まる」と答えた点です。
一方で、82.9%は「AI時代でも有名大学の価値は残る」と回答しています。これは学歴の価値が消えるというより、意味が変わっていることを示します。大学名が将来を保証する時代から、変化の大きい時代における一定の信頼や選択肢を担保するものへと、保護者の認識が移りつつあると読めます。
「AIで社会は変わる」が保護者の共通認識に
今回の調査では、100%が「AIによって社会や働き方が変わる」と回答し、98.2%が「将来なくなる職業が増える」と見ています。さらに72.0%は、自身の仕事や働き方がすでにAI活用によって変化していると感じていました。
教育関係者にとって重要なのは、AIの影響が遠い未来の話ではなく、保護者の日常感覚になっていることです。進路指導や募集広報で従来型の「偏差値」「合格実績」だけを前面に出しても、十分に響きにくくなる可能性があります。保護者は、子どもがAIと共存する社会で何を強みにできるのか、その土台づくりを学校や塾に求め始めています。
中学受験は「学歴獲得」より「環境選び」へ
中学受験については、41.5%が「させたい」と回答する一方、40.2%が「悩んでいる」と答えました。受験熱が弱まったというより、受験の意味づけが変わっている点が重要です。
受験をさせたい理由の上位には、「子どもに合う環境を選ぶため」75.0%、「AI時代ほど地頭や思考力が必要」72.1%、「学習意欲の高い環境を選びたい」68.1%が並びました。保護者は受験を、単なる序列競争ではなく、思考力や主体性を伸ばす環境へのアクセス手段として捉えています。
反対に、受験をしない理由では「子どもの負担が大きい」73.7%、「別の経験を重視したい」68.4%が上位でした。ここからは、受験の価値を認めつつも、AI時代に必要な力が本当に受験準備だけで育つのかという迷いも見えてきます。
学校・塾に求められる「正解を出す力」以外の設計
自由記述では、「答えのある問題を速く正確に解く力」の価値低下を懸念する声や、「学校にも塾にも進化してほしい」という要望が目立ちました。AIが知識検索や定型処理を担うほど、人間側には問いを立てる力、他者と協働する力、試行錯誤する力が求められます。
この変化は、授業設計や教材選定にも直結します。たとえば、単元理解の確認をAIドリルで効率化しつつ、教室では記述・対話・探究・発表に時間を振り向ける設計は、保護者の期待とも整合しやすいでしょう。AIを使うこと自体ではなく、AIでは代替しにくい学びに人的資源を再配分できるかが、学校・塾の差別化ポイントになります。
また、63.4%が「子どもに自分と同じ職業についてほしくない」と答えたことも見逃せません。親自身が将来像を描きにくいからこそ、教育機関には職業名ではなく、変化に適応できる力の育成を言語化して示す役割が求められます。
💡 先生へのポイント
- AI活用を「効率化」で終わらせず、対話・探究・表現の時間創出につなげる
- 進路説明では、偏差値や実績に加え「どんな学び方が身につくか」を具体化する
- 保護者面談では、AI時代の不安を前提に「その子に合う環境」の視点で整理する
- 中学受験指導でも、暗記量だけでなく思考プロセスの可視化を重視する
まとめ
今回の調査では、AIが保護者の進学観・職業観・子育て観を同時に揺さぶっていることを示しました。学校や塾には、受験の成果だけでなく、AI時代に子どもが何を学び、どんな力を獲得できるのかを、より具体的に示すことが求められています。
出典:AI時代、親たちの教育観に異変 7割が「いい大学=安定」は弱まると回答 4割が中学受験を希望する一方、悩む親も4割に 6割の親が「子どもに自分と同じ仕事についてほしくない」 | 株式会社こうゆうのプレスリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000081.000012991.html




